「生もと」造りとは何でしょう?
日本酒は、米を日本酒の酵母で発酵させて日本酒にします。 そのままの米を酵母は消化できません。酵母には、デンプン質はそのままでは分子鎖が長すぎるためです。分子鎖をちょん切る役目の人が必要です。
そこで登場するのが、麹カビです。麹はデンプン質をちょん切って短い糖の分子にします。ちなみに、甘酒が甘く感じるのは麹が糖の分子変えたからです。この糖の分子を消化しての酵母はアルコールを生成します。
ところが、ここで問題があります。糖の分子は酒の酵母だけでなく、他の酵母にとっても美味しい餌です。他の酵母が入ると雑味、エグミ等が発生します。そのため、他の酵母を働かせないようにする必要があります。
細菌、他の酵母など一般的な酵母など大部分は、活動温度が高めで、酸性、エタノール環境下に弱い性質があります。それを利用して日本酒の酵母のみを増やします。そのために冬に仕込みます。空気中にいる乳酸菌を取り入れて乳酸をつくることにより酸性にします。エタノールは日本酒の酵母が作ります。
最初は、全体の何分の一かの酸性、アルコールの環境を作りますが、最初は毎日かき混ぜることにより作成する必要があります。このかき混ぜる作業を「山卸し」と言い、冬の寒い中での作業で辛い作業になるようです。
こうして出来上がったものを もと (酒へんに 元)、といいます。もとができると、それに酒米を蒸してから麹カビで分解したものを加えて、熟成させてさらに日本酒を作ります。このときはもうかき混ぜなくても大丈夫です。日本酒の酵母に有利な環境が揃っているからです。これに更に酒米を蒸して麹カビで分解したものを加えてさらに熟成して日本酒を作ります。この方法は昔から行われている先人の知恵です。
この昔ながらの製法でつくられた日本酒は 「生もと(きもと) 造り」と表示されていたりします。
一番大変なのは、最初の 生もと 作るときの 山卸し 作業です。研究によって山卸ししなくても、自然な循環でかき混ざることが発見されます。山廃仕込みは、山卸しを廃止した方法によって造られたことを意味します。昔ながら製法の一部省略版という感じです。
山廃は特別な名前になっている現在はどうしているのか?もう一つの方法があります。要は、他の細菌の混入を下げる酸性環境があれば良いので、乳酸菌取り込んでに乳酸を作ってもらわなくても、乳酸を最初から入れれば良いのです。もとを作る時間も省略できます。この 酒のもと を 速醸もと と言います。味気ないようですが、安定して不要な菌の混入を防げ、作りての手間を省力できる画期的な方法です。
最後、この他の細菌の混入を防ぐ方法ですが、この方法では侵入を防ぎにくい強敵の菌がいます。納豆菌です。納豆菌は芽胞をという硬い防御体制を取ることができ、熱、酸性などの耐性が非常に強く駆逐しにくいのです。酒蔵の見学で納豆は食べないよう事前に注意事項あるところもあります。